人間にとって『聴く(聞く)』という行為は、「見る」と並んで最も簡単なリテラシーの一つである。耳さえあれば、いつでも、どこでも、何をしながらでも、「聴く」は完結する。本来そこには、技術やスペックといった理屈は介在しない。
そんな「聴く」を、人間のありのままの姿で再現するスピーカーがモバイルツールとワイヤレス機器のトップメーカーParrotの『Zikmu』だ。Music、Music、Music・・・・と繰り返し言い続けた時につながって耳に残る語感「sicMu」からネーミングされたこのスピーカーは、音を空気のように楽しむための「第2の耳」である。
●振動する空気をデザインする
Zikmuの最大の特徴は、従来にはなかった画期的な技術に秀逸で大胆なデザインを纏わせたことにある。とかく、一部のマニアにしか理解できないスペックを全面に押し出し、技術力の高さを競い合うオーディオ業界の中にあって、ユーザーのライフスタイルと生活空間ありきのデザインは類を見ないものといっていいだろう。
実際、トランペットを逆さまにしたようなフォルムは、スピーカーというよりもモダンなアートかオブジェ。普通のリビングはもちろん、和室からスタイリッシュな店舗に至るまで、どんな生活空間にもフィットする。あくまで、使うヒトが主役なのである。
それもそのはず、デザイナーはなんとあのフィリップ・スタルク。建築からインテリア、家具、食器、出版物まであらゆる生活デザインを手がけるこの気鋭は、そのキャリアで初めてとなるスピーカーのデザインにも、人間の根源的なリテラシーを尊重したグローバルでユニバーサルな彼流のアプローチを貫き通した。氏自身の言葉を借りれば、こういうことだ。
――フツーの性能を持ったフツーのスピーカーをデザインしてくれという依頼なら、即座に断っただろう。このプロジェクトに惚れ込んだ最大の理由は、“振動する空気をデザインする”ところ。その性能によってユーザーが何を体感するかという包括的なアプローチだったからだ。このスピーカーの存在意義は、最大の結果を最先端の技術と最小限の材料で出すということに尽きる――
それは、スピーカーを装置というハードとして存在させるのではなく、ソフトとして生活者それぞれの空間や使い方に溶け込ませ、生きるために不可欠な空気のような存在にしてしまうということではないだろうか。
スタルクは、テクノロジーを生活デザインというオブラートに包んで、ストレスフリーで音を楽しむ第2の耳としての新しいスピーカーシステムのあり方を見せてくれたのである。
●数字では語れないスペック
Zikmuの製品的な特徴を語るのにスペックは必要ない。もちろん、NXTフラットパネル振動板やダウンファイヤー型ウーファなど、極めて高度なテクノロジーが駆使されているから、一般ユーザーには縁のない専門用語で煙に巻くこともできるが、Zikmuにはそんなオーディオ業界的なギミックは不要なのだ。
語られるべきポイントは、たった2つ――
1つは、Parrot社独自のテクノロジーによって、空気自体を振動させているということ。
一般的なユーザーにとってノウハウはどうでもいいだろう。わかりやすく言えば、スピーカーの振動で空気を共鳴させ、音に新たな命を吹き込み、空気自体から音を感じさせているのである。それは、何かを介在して感じる音ではない。あたたかくヒトを包み込む香りのような、まさに空気そのものであり、スタルクの言う「振動する空気をデザインする」とはこのことを指すのである。
もう1つは、音源を選ばないワイヤレスシステムということ。
そもそもワイヤレス機器のトップメーカーであるParrot社は、最先端のBluetooth技術を有しており、この技術力を基軸にして、ZikmuはPCはもちろんのこと、iPodでも、ケータイでも、MP3プレーヤーでも、あらゆる音源をワイヤレスで取り込める仕組みなのだ。特にiPhoneはドッキングステーションも兼ねて充電も可能になっており、理想の組み合わせといえるだろう。
ワイヤレスでありながら2つのスピーカーが完璧に同調しつつ、空気の振動によって音を感じるという究極の立体サウンドこそが、Zikmuの特筆すべきスペックなのである。
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